本日の読書 清水博子『街の座標』

街の座標

街の座標

 1作品しか読んだことがないのに、卒論のテーマに選んでしまった作家I。卒論を書かないと卒業できないのに、卒論がまったく書けない焦燥感。精神的に追い詰められているのか、体調にまで異常をきたすほど。そんな中、偶然その作家が、自分の近所に住んでいることを知ってしまったら!?
 ええっと、作家Iをストーキングする女子大生の物語。と同時に、下北沢という街をめぐる物語でもある。このストーキングの仕方が、いやらしいほど心憎いやね(笑)。
 どこまでが現実で、妄想なのか。追い詰められる精神が見せる現実と妄想と幻覚とが入り混じる光景はなかなか面白かったけど、あんな風に踏ん張らずに、幻想に溺れちゃっても良かったのでは?と思ったりもした。
 そして、女性特有の生理が「何もここまできめ細やかに書き込まなくても…」戸惑うぐらい観察眼鋭く、生臭く感じられるほど執拗に描かれているのが印象的。男性の読者は、この作品をどう読むのだろうか。 
 作家Iの小説で描かれたS区S街を現実の下北沢で彷徨する主人公を真似て、現実の下北沢を彷徨してみたい誘惑に駆られる。なかなかにエキサイティングな読書だった。