本日の読書 三浦しをん『きみはポラリス』

きみはポラリス

きみはポラリス

 三浦しをんが描くさまざまな愛の形。さまざまな媒体に掲載された「お題」または「自分お題」に沿って書かれた「恋愛をテーマにした短篇」をまとめた短篇集。全11作収録。
 シチュエーションの違いはあるものの、どの作品の主人公も20〜30歳と、さほどバリエーションがないのが物足りないというかなんというか。そういう物語を求められてないからでしょうが、ねちょねちょねばつくような××も、そういえばなかったな。ただ、はっとするような文章の冴えと内面の描写の巧みさに、引き込まれるかのように読んでしまった。


 印象に残ったのは、「永遠に完成しない二通の手紙」「永遠につづく手紙の最初の一文」の報われることも告白することも決してない切ない片思いと、「ペーパークラフト」のざらざらする奇妙な三角関係、春太の一人称で綴られる「春太の毎日」。ここだけおひさまの匂いがするかのようで思わずほっこり、だけどおしまいで鼻の奥がツーーンとしてきちゃって困った。無垢な想いが愛しいですねえ。その他、「裏切らないこと」にちらり登場するだけなのに、強烈だった前園さん夫婦も。
 いくつかの作品を、他の媒体で読んでいたから、まっさらの状態で読めなかったのは残念。だけど、どの短篇もしみじみと良かった。さらなる活躍に期待!(どなたか「永遠に完成しない二通の手紙」「永遠につづく手紙の最初の一文」を漫画化してくれないものか。ぜひ読んでみたい!)