本日の読書 よしもとばばな『ひとかげ』

ひとかげ

ひとかげ

 私の「とかげ」のイメージは、暗くてひんやりしていてる物語。当時の私には、たぶんこの作品の良さが分かっていなかったんだろう。その「とかげ」が、歳月を経てリメイクされ、「ひとかげ」になりました。
 「ひとかげ」と「とかげ」と二編収録されているので、どこがどう変わったのか、読み比べられるようになっているのだが、リメイクにより物語に厚みと深みが出て、ぐんと良くなったと思う。枚数の関係からなのか、こんなに短い物語だったのか!が、久しぶりに読んだ「とかげ」の印象だった。変った部分と変わらない部分と。「ああ、この言いまわしが作者は好きなんだな」そういう部分を見つける楽しみもある。
 一人で背負うには重すぎるものを抱え込んでいる二人が偶然出会い、ともに寄り添い生きていこうとする、その静かな祈りのような姿が、とても心に染みた。このころの吉本ばななは、本当に本当に大好きだったな。
 リメイクに不満があるとしたらp.67〜68のお母さんの言葉かな。要らない。私は「とかげ」の方がいいと思うんだけど、好みの問題でしょうかねえ。