本日の読書 近藤史恵『タルト・タタンの夢』
- 作者: 近藤史恵
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 47回
- この商品を含むブログ (114件) を見る
日常の謎の安楽椅子探偵もの。ミステリとしては弱い気がしないでもないけど、客たちが持ち込む不思議な事件や出来事の謎を、シェフの三舟が、料理人ならではの知識と洞察力で鮮やかに解決してしまう。謎が解かれることによって客たちは、心に抱えたわだかまりがほろほろと溶け出し、まるで絶品料理を味わった時のように幸せな気分になる。そのさまがいいんです。舌も心も幸せな気分になる、素敵で美味しいミステリです。
いいなあと思ったのは「ガレット・デ・ロワの秘密」。真相には…まったくご馳走さま(笑)。そうしか考えられないけど、でもどうやって?だったのが「理不尽な酔っぱらい」。解き明かされた真相に、ぐわあああと胸が熱くなってしまったのが「ぬけがらのカスレ」と「割り切れないチョコレート」。特に「チョコレート」は、あくまでも推測にすぎなくて、もしかしたらそうかもしれないしそうじゃないかもしれないけど、でもそうであって欲しいなあと祈ってしまったわ。
三舟さん以外の登場人物の印象が、若干薄めなのが残念。この本だけで終わりにするのは惜しいので、ぜひシリーズ化して続けて欲しい。語り手でギャルソンのぼくこと高築智行は、パ・マルで働き始めてまだ二ヵ月。なのに、妙に料理に詳しい。以前にもフランス料理屋で働いてたのかしら?とか、なぜ志村さんは高級ホテルのメインダイニングを辞め、このビストロに来たのかなど、いくらでもネタはあると思うので。ぜひ書いていただきたいー。