本日の読書 野中柊『その向こう側』

その向こう側

その向こう側

 初夏から初秋へ。22歳の季節が移ろう中で、母の結婚のこと、年上の美しい女性真希子さんのこと、父親となる敏史さんへの恋にも似た思慕など、、、揺れ動く主人公鈴子の胸の内を繊細かつ丁寧に描写した小説。
 心理描写は確かに上手い。だけど当事者じゃないクセに、あれこれ妄想逞しく深読みし暴走し、周囲の人間を振りまわしてばかりの鈴子に、読んでいてイライラ。単なる我がままなお子ちゃまな甘ったれじゃーん。彼女の周囲にいる人間は、向上心とバイタリティ溢れる魅了ある人たちばかりなのに、刺激を受けながらもほとんど成長しないし。「結局、あなたはどうなの?」つい問いただしたくなってくる。
 美味しそうな料理の描写は大歓迎だけど、舞台背景がヘンにおしゃれなのも居心地が悪くて私にはちょっと。私にはイマイチ楽しめなかった小説でした。
 そうそう柊さんの小説って、女性はたいていハンサムで素敵なのに、その女性が惚れる男性がまったく魅力的に見えないのはなぜだろう。不思議。