本日の読書 野中柊『マルシェ・アンジュール』

マルシェ・アンジュール

マルシェ・アンジュール

 正直、この前に読んだ『その向こう側』がダメで、もう野中柊作品読むのから卒業しようかと思ったけど、この連作集は実に良かった。すごく好き。ま、足かけ3日かけて読むことになりましたけどねえ。トホホ(涙)。
 非日常の空間である24時間営業の高級スーパー「マルシェ・アンジュール」に集う人間模様を描いた作品が6編収録。各話に何らかの形で登場する「マルシュ・アンジュール」が、集う人間によって、いっとき現実を忘れさせてくれる避難場所になったり、華やかなハレの場所になったり、孤独な魂を癒す場所となったり、普段心の奥底に押し込めてる本心が露呈する場所になったり、男女の出会いの場所となったり、、、。
 「マルシュ・アンジュール」が浮き彫りにする集う人間たちの人生模様が、必ずしも明朗なものばかりでなく、陰であったり人生の滓のようなものまで垣間見せるところが、なかなかに興味深い。
 大抵の作品の場合「マルシェ・アンジュール」は、現実離れした夢のような特別な空間と描かれているのだけども、最後の最後で、地に足がついた現実の場所になる演出も心憎い。
 私が印象深かったのは「初恋」「予感」「星座」「聖夜」かなー。各話に登場し描かれる食べ物がすんごく美味しそうなところが、いかにも柊さんらしいのも素敵。
 『その向こう側』同様コジャレた物語なのに、どこかどういいのか言葉にするのが難しいぐらい、素敵な小説集でした。