皆川博子『聖女の島』

 復刊してくれてありがとう!心から感謝したい。今でこそ慣れたけれど、こういう作品を昭和の時代に発表していた皆川博子の才能、恐るべし!皆川ワールド全開の幻想ミステリの傑作である。
 少女達の更生施設の園長が、信用ならない人物かつ語り手だというのは、読んでいるうちに薄々分かってくる。園長の記憶には「3人亡くなったから少女の人数は28人」とあるのに、31人きっちりいるのはなぜなのか。なぜ園長は執拗に自分の生い立ちを、姉への確執をしゃべってしゃべってひたすらしゃべり続けるのか。円満で完全な筈の園に、ぽつりぽつりと綻びが出来てきて、、、そしてラストへと収斂していく。なるほど。こう決着をつけるのか。圧巻、そして絶句。嗚呼。
 作品の舞台となった島は、もしかして軍艦島なのかなと思いつつ読んだら、あとがきでそうだと知った。納得。廃墟の殺伐として荒涼としつつも美しい風景が、この物語には非常によく似合う。聖と俗。ねっとりとした不思議な美しさに絡め取られてしまう愛憎の物語。堪能しました。恩田陸による解説が素晴らしいので、復刊されたこの版で読んで良かったー。
[そういえば恩田さんも、軍艦島をモデルにしたと思しき作品を書かれてましたね。]