皆川博子『聖女の島』
- 作者: 皆川博子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/05
- メディア: 新書
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少女達の更生施設の園長が、信用ならない人物かつ語り手だというのは、読んでいるうちに薄々分かってくる。園長の記憶には「3人亡くなったから少女の人数は28人」とあるのに、31人きっちりいるのはなぜなのか。なぜ園長は執拗に自分の生い立ちを、姉への確執をしゃべってしゃべってひたすらしゃべり続けるのか。円満で完全な筈の園に、ぽつりぽつりと綻びが出来てきて、、、そしてラストへと収斂していく。なるほど。こう決着をつけるのか。圧巻、そして絶句。嗚呼。
作品の舞台となった島は、もしかして軍艦島なのかなと思いつつ読んだら、あとがきでそうだと知った。納得。廃墟の殺伐として荒涼としつつも美しい風景が、この物語には非常によく似合う。聖と俗。ねっとりとした不思議な美しさに絡め取られてしまう愛憎の物語。堪能しました。恩田陸による解説が素晴らしいので、復刊されたこの版で読んで良かったー。
[そういえば恩田さんも、軍艦島をモデルにしたと思しき作品を書かれてましたね。]