若竹七海『バベル島』

バベル島 (光文社文庫)

バベル島 (光文社文庫)

 若竹七海作品には、よく背筋がぞくりとする恐ろしさが含まれ、描かれている。この本には今まで単行本未収録だった「怖い」作品がこれでもかと詰まっている。まんま実録怪談話のような作品や因縁話、不条理ホラーや、狂気にとりつかれた人間を描いた作品まで、よくもまあ書いたよなあと怖さに怯えながらも感心してしまう。読んでいるうちに、七海は七海でも、加門七海かと間違えるぐらい。そう落とすのかのオチの怖ろしさ。ミステリだけでなく怖さを描かせても若竹七海は上手いなあとついつい感嘆。ただ本当に怖くて怖いので、夜中には読まない方が賢明かも(汗)。
 印象的だったのは「白い顔」「人柱」「上下する地獄」「ステイ」「回天」「招き猫対密室」、そして「バベル島」。怪談実話風の作品もいいけど、ミステリとしてのも味わえる見せ方にひとひねりある作品のが好きみたいだ。特に、冒頭からドキリとしてはっと息を飲む展開で、小説ならではの作品「ステイ」が特に強烈だったようで、さっそくスイカを食べる夢を見てしまった単純な私です(汗)。これから「スイカ割り」というと、この作品をほろ苦く思い出しそう(汗)。祖父の時間と孫の時間が最初と最後で時空を超えて繋がる表題作「バベル島」も構成からして見事だ。答えは最初から読者に提示されているのに、、、。この結末には恐怖、した。
 2008年は若竹さんの新作長編が読めますように!