川上未映子『わたくし率イン歯ー、または世界』

わたくし率 イン 歯ー、または世界

わたくし率 イン 歯ー、または世界

 私、たとえダンナでも子供でも「口を開いて歯を見せるのだけは嫌!」って思ってたんだけど、この本を読んでその嫌な気持ちの理由が分かった!そうか、「わたし」は奥歯だったからなのか!(笑)
 表題作は饒舌で饒舌で、とにかく最初から最後までしゃべくり倒してる小説。なので自然と、しゃべる速度で読んでいた。韻を踏んだりリズムカルで、ぜひ朗読してるさまを見て聴いてみたいと思った。
 奇異に思えたタイトルも、一読すると疑問氷解。ああ、そうそうそういうことだったのかと腑に落ちるから不思議。4分の3からラストにかけて、みるみる魔法が解けていくかのようにすべての種明かしがされて驚き(映像だったら一目瞭然なんでしょうが)、こうした手法で読ませてしまった作者の才能に感嘆したのだった。
 同時収録の「感じる専門家 採用試験」のが難解だったかも。言葉言葉言葉。<在る>ということ。ただ、読んでいてとても心地良かった。また機会があったら、川上さんの小説を読むと思うたぶん。