楊逸『ワンちゃん』

ワンちゃん

ワンちゃん

 芥川賞候補作にノミネートされた「ワンちゃん」と書き下ろしの「老処女」が収録された作品集。日本で暮らす中国人女性がどちらも主人公で、飄々とした語り口で書かれる文章はすいすい読めてしまうのだが、物語が抱えるものはずっしりと重たくて、読むのが辛く居たたまれなくなってくる。女性ゆえの哀しみ。女性であることは、なんて生きづらいことなのか。
 中国人妻を娶る日本人事情を、同じ中国人妻で中国側の仲介者視線で見るとこう見えるのかと思い、ワンちゃんが辿っていた人生、それを跳ね返してきた力強さ健気さが物悲しくなった「ワンちゃん」に、中国の一人っ子政策が時嬉の人生に投げかけた残酷な呪文のこと、思い描いていた女の人生双六から期せずしてリタイアしてしまった時嬉が滑稽でただただ気の毒で居たたまれなかった「老処女」とも、とても印象に残った。それにしても女性って女性って、、、(涙)。