坂木司『先生と僕』

先生と僕

先生と僕

 伊藤二葉は、押しにはとことん弱くて受身の十八歳。おまけに人が殺される小説が読めない、極度の怖がり屋だ。受身の性格が災いして推理小説研究会に入ることになり、そしてひょんなことから中学生の家庭教師を務めることになる。立場上教え子となる隼人くんは実はミステリマニアで、二葉のミステリの先生なのだ。隼人と二葉の凸凹コンビが、日常で遭遇した謎について推理する日常の謎系のミステリだ。
 教え子の中学生がミステリの先生かつ探偵役で、年上である二葉があれこれミステリのレクチャーを受けるという図式が面白い。日常の謎といっても、収録された5編が5編とも実社会でも話題になるような犯罪事件ばかりであまり後味が良くないのだが、ちょっと間抜けでヘタレな二葉と頭脳明晰で美貌の持ち主隼人のキャラクタの魅力に救われているようで、不思議と後味がいい。
 各話の最後で、隼人くんが二葉に解決した事件から連想するミステリのタイトルを宿題として挙げるのが楽しい。こうして薦められると、私まで未読の本を読みたくなる。続編も、きっとあるだろうなあ。どんな本を紹介してくれるのか、続編が待ち遠しい。