紺野キリフキ『ツクツク図書館』

ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)

ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)

 なんというか…「ありえねーーーーー!ヘン、ヘン、ヘン!」と大声で叫びたくなる不思議でシュールでヘンテコな物語だ。村上春樹『ふしぎな図書館』もシュールでヘンな話だったけど(脳みそ、ちゅーちゅー吸われるなんてヤ!)、それの上を行くヘンテコさ。ヘンテコだからといって生理的嫌悪感でぞわっとすることはなく、ユーモアがあって温かくて、切なさにきゅんとさせられたりとページをめくる手が止まらない面白さなのだ。きっとツクツク図書館にはこの本、所蔵されてないに違いない(笑)。
 町のはずれにある図書館には名前がなくて、筑津区にあるのでツクツク図書館と呼ばれてる。ツクツク図書館が他の図書館と違っているのは、つまらない本しか所蔵されていないこと。このツクツク図書館に妙に着ぶくれた女がやってきたことから物語は始まる。ツクツク図書館には滅多に人が来なくて、職員の仕事は本を、つまらない本をひたすら読むこと。働いているのは館長に「運び屋」「戻し屋」「語学屋」そして着ぶくれた女だけ。図書館にはテーマに沿った本を集めた小部屋が無数にあって迷路のようで、女はときどき図書館の中で迷子になる(笑)。
 そんな存在自体が「ありえない」図書館の日常を、まったりと描いたのがこの本。よくよく考えると「???」なんだけど、深く突っ込んで追及したりせず、ただただ物語の海に身をゆだね、ぷかぷかたゆかってるのが正しいこの本の読み方だと思う。
 職員みなユニークな存在なんだけど、ヘンテコさでは妙に着ぶくれた女がピカ一でしょう。そんな彼女の飼い猫がまたチャーミングなのだ。内包されてる「猫の物語」が大好き。結局はそのために、この物語があったのだったりして(笑)。