鯨統一郎『浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話』

浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパノベルス)

浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパノベルス)

 『九つの殺人メルヘン』の続編で、ヤクドシトリオが再登場…らしいけど、どんな内容だったのか綺麗さっぱり忘れ去ってる(汗)。「森へ抜ける道」という名の日本酒バーに集まったヤクドシトリオがする昔のテレビ番組などの懐かし談義を枕に、お伽話を研究しているアリバイ崩しの東子こと桜川東子さんに探偵の工藤がどうしても解けない殺人事件の謎を持ちかけて、東子さんが日本の昔話の新解釈になぞらえて謎を解き明かす…という、パターンのミステリ。
 「なぜ犯罪を犯したのか」という動機を(作中では「心のアリバイ」という)、日本の昔話の新解釈になぞらえて解き明かすんだけど、新解釈はともかく導き出される真相が「本当かよ?」どの説も強引すぎるのが難点か。「ほお」感心したのは表題作ぐらいかも。新解釈自体は、面白いんですけどねえ。ま、いかにも鯨作品らしいといえば鯨作品らしいんだけど。
 枕にあたるヤクドシトリオがいつもしている懐かしい話のが、ミステリ自体よりも印象に残ってたりして(笑)。アニメとかドラマとか映画とか、少しでも分かる部分はにやにやしながら読んだけど、ラジオにフォークはねえ。全く知らないので「そうなんだ」半ばスルーしながら読んでいた。私のお年頃でそうなんだから私よりもっと若い世代の人には、ちんぷんかんぷんで面白くもなんともないんだろうなあ、この枕の部分。
 それよりも、他の鯨作品へのリンクが、それとなく仄めかされてるお遊びの部分が面白かった。そんなところであの作品ともつながっていたのか!サービス心に溢れているところが、ファンにはたまらない。にやにやにや。
 読み終えると『九つの殺人メルヘン』がたまらなく読みたくなるので、傍らに置いて読書するのが賢明かもしれない。そういえば東子さん、『すべての美人は名探偵である』にも登場されてましたな。