SFサイード『バージャック』

バージャック―メソポタミアンブルーの影

バージャック―メソポタミアンブルーの影

 ブルーな猫の横顔が印象的なこの作品、表紙を見るたびに気になっていたんですが、こうして無事読めて満足。
 由緒正しいメソポタミアン・ブルーの一族は名門猫の一族で、伯爵夫人のお屋敷から一歩も外に出ることなく、平穏に暮らしていた。ただ一匹、先祖の英雄ジャラールに憧れる一族の落ちこぼれバージャック・ポーを除いては。バージャックの夢は、外に出て、未知の世界で冒険すること。そんなある日、突然黒い靴の男と黒猫二匹が屋敷に現れ、平穏な生活を揺るがすことに、、、。
 猫、猫、猫。猫がいっぱい!猫が主役の冒険&成長物語である。
 バージャックは一族の危機を救うために未知なる外の世界に出てきたものの外での生活を何一つ知らず、連れ帰るべき「犬」さえどんなものなのか、知らないありさま。街で偶然知り合った猫ホリーとタムに街での処世術を教わり、夢の中でメソポタミアのジェラールと会って敵と戦う七つの技を一つづつ教わりながら、少しづつジェラールの子孫に相応しい一人前の猫へと成長していく。
 読みながら先の展開が透けて見えてしまうのが難点か。猫が主役ゆえ、人間同士でどんなことがあったのか、黒い靴の男の正体、伯爵夫人の消息さえ判らないのももどかしい。あの人形も、、、。とはいえ、エキゾチックなオリエンタルな雰囲気が漂うところも面白いし、回収されていない謎がまだまだ残っているので、続編*1でバージャックのどんな冒険が読めるのか、楽しみだ。
 「ダレン・シャン」シリーズのイラストでお馴染み田口智子さんによる挿絵が、たくさんあるのが嬉しい。さまざまな猫の表情に動きのあるポーズなど的確に表現されていて、とても良かった。猫好きにはたまりません〜。猫好きを激怒させるエピソードなんかが、あったりもするんですけどね(汗)。
 それにしても、メソポタミアが原産国の猫ってどんな猫なんだろう。私のイメージではバージャックはペルシャ猫…じゃなくてシャム猫なんだけど。

*1:金原瑞人さんの訳者あとがきによると、続編の続編まで出そうとか!