恩田陸『猫と針』

猫と針

猫と針

 2007年にキャラメルボックスのために書き下ろした戯曲「猫と針」の上演台本を基に、加筆修正し単行本化したのがこの本。
 「朝日のようにさわやかに」を思い出させる喪服姿の男女5人が登場し、共に過ごした高校時代そして近況を話し合ううちに、だんだん不穏な空気が立ちこめてきて、疑心暗鬼にかられてくるところは面白かったけど、邪悪さに徹しきれてなくて物足りなさが残る。
 どんな演技だったのか、お芝居で観てみたかったなー。それが無理ならば、せめてこの本に上演中のカットを載せ、雰囲気だけでも味あわせて欲しかった。本にする際に加筆修正されているようだけど、台本だけ読んでも面白くない(苦笑)。と思ったけど、本谷有希子さんの『遭難、』は戯曲ながらまるで芝居を見ているかのような臨場感がひしひしと伝わってきてとても面白く読んだ記憶があるので、そこが「猫と針」が“小説を書く人のお芝居”と言われてしまう所以なのかな、と思った。