高田侑『フェイバリット』

フェイバリット

フェイバリット

 主人公由真は29歳の元保育士。無認可保育所で働いていたが、あまりにも過酷な労働条件とある事件がきっかけで身も心もぼろぼろになり、保育士の仕事を辞めざるえなくなった。そんな由真が幼馴染のハツモとの交流などを通じ、いつの間にか見失っていた自分のお気に入りを見つけ出す、というお話。
 恋愛小説でもあり、お仕事小説でもあり、家族小説でもあり、成長小説でもあり、、、期せずして、『風に顔をあげて』と内容的にカブる部分があるかも。「どんな小説なの?」と聞かれたときに困るぐらいあれこれ物語要素が詰め込まれていて簡単に説明するのが難しいんだけど、由真の固く強張った心と笑みをいつの間にか優しく解きほぐしてくれるハツモが意外にもナイスキャラだった。小太りでぱっとしない外見のハツモだけど、いやあ。人間は外見じゃなくて中身だね、ハートだね。人間的にも尊敬できるめっちゃいい奴なんだもん。「お気に入り」だらけのハツモとのデートは、傍から見ていてもむちゃくちゃ楽しそうだった(笑)。
 そんな風に恋愛小説…かと思うと「ママは、大好き!」でしっかと泣かされちゃうし。ぐすん。ホラーでデヴューした人なのに、こんな心温まる物語も書かれるなんて!多才な人なんですねえ。他の作品も読んでみよう。あ、私もイカゲソ好きですよ(笑)。