平安寿子『風に顔をあげて』

風に顔をあげて

風に顔をあげて

 今月2冊目の平さんの本。『セ・シ・ボン』が、55歳になった今だからこそ書けたご自身の若造だった26歳の時の語学留学記なエッセイだったのに比べ、この『風に顔をあげて』は25歳フリーターで、ただ今“三十怖い病”発病中の風実ちゃんのお話。
 25歳とまだまだ女の子のクセに「もう若くない、お気楽な女の子はもうやれない…」一人憂鬱入ってる風実ちゃんなんかに誰が共感なんか出来るものか。最初の頃は「けっ」。風実の若さゆえの傲慢さや思い上がりばかりが鼻について、読むのがそりゃ辛かったけど、そこは平さんだもの。風実を取り巻く人物たちみな、一癖も二癖もあるような人たちばかりで、それぞれがそれぞれにいい味を出していて、そんな周囲の人たちとの交流によって、風実も少しづつ「女の子」から「大人の女性」へと成長していく。追い風ばかりでなく向かい風の日もあるけど、後半夢の実現のために前進していこうと背筋ピンと伸ばして佇まいを正した風実ちゃんが、冒頭で愚痴こぼしてる人間と同一人物とは思えないほど、素敵だった。
 カミングアウトしちゃった弟の幹も、風実ちゃんの飲み友達小池さんも、新たな目標を見つけた英一くんも、そしてチャーミングな風実ちゃんも、みんなみんな頑張れー!エールを送ります。