宮木あや子『雨の塔』

雨の塔

雨の塔

 “陸の孤島の学園が舞台”“大人のための少女小説”と聞いて、恩田陸『麦の海に沈む果実』や友桐夏作品を思い出したし、つい比べながら読んでしまったのだが、うーん。現実感皆無な物語はまるでひねりがなく、そうなるんじゃないかと思った通りの結末を迎えてしまった(苦笑)。ストーリ展開は二の次で、それより孤独な魂同士の共鳴、密室の閉塞感など作品の雰囲気を味わうべき作品なのかもしれない。
 しっかし、そもそも“陸の孤島の学園”が大学なのに唖然呆然。これ、中学かせめて高校だったら良かったのに。そうしたらもっと彼女らが抱える孤独、無力感、空虚感に共感できたのに(みなさん、お育ちがよろしいから。大学生にもなって、親のいいなりになって閉じ込められてるなんてどうよ?と思ってしまった)。
 でも砂糖菓子みたいに現実感皆無で、ただひたすら美しいものだけを集めて出来ている濃密で官能を刺激する耽美な小説は大好きー♪これ、密室心理劇としてお芝居にしたら好さそう。宮木作品、これからも追いかけて読みますわよ。