多島斗志之『少年たちのおだやかな日々』

少年たちのおだやかな日々 (双葉文庫)

少年たちのおだやかな日々 (双葉文庫)

 マイミクさんが重版される前に入手されて読んでらして、多島さんにそんな埋もれた傑作(しかもホラーだし!)があるとは知らなかったので、驚くと同時にすごく読みたくなった作品。一生懸命探して探して探して、、、復刊された新カバーのものをようやく入手。さっそく読んじゃった。7編収録された短編集です。
 どれも主人公は中学2年生の少年。タイトルに反して、どんどん穏やかならざる状況に追い詰められてずぶずぶドロ沼にはまっていく少年たち。このままやられるのか、それとも反撃するのか。残酷でブラックな内容で怖ろしくてたまらないのに、先の展開がむちゃくちゃ気になって、どの話もページをめくる手が止まらない。こうして読めて大満足。
 この作品の中で描かれる狂気が、平山夢明作品のものとはまた違って興味深かった。そもそも狂気として存在してるのではなく、ごくごく普通の少年たちがこちらからあちら側へと境界線を踏み越えていく。誰にでもありえるんでしょうが、それが危うげな少年だということがどの作品でも生かされている。
 「罰ゲーム」「言いません」はかつて映像化されたことがあるとか。話自体強烈だったのでそれも納得。痛すぎるほど痛いけど、ぜひ見てみたい!
 作品集の冒頭に置かれた作品タイトルが「言いません」で最後の作品が「言いなさい」なところもいいなあ。〆である「言いなさい」、いろいろ深読みできる不気味さといや〜な後味の悪さが胸にべっとりへばりつく。まさしく「少年たちの黒い青春」を締めくくるに相応しい作品だった。