平山瑞穂『プロトコル』

プロトコル

プロトコル

 平山瑞穂は私には楽しめないんじゃないかなあと思う今日この頃、どうかなあと探りつつ読んだ『プロトコル』だけど、これは面白かった。
 ストーリはまあ“ヘンな派閥争いに巻き込まれちゃったせいで災難でしたな。ま、そんな真相だと思ってたけど”だったけど、とにかく「英語の綴りをどう読むか」に強い拘りを持ち、マジメでカタブツで論理的な思考回路の持ち主ゆえに不器用で生き辛そうな主人公ちさとの設定がものすごく利いてる、お仕事小説であり家族小説であり恋愛小説であるのが本書。最後の「恋愛」はやや強引だった気がしないでもないけど、そうしないとタイトルが生きてこないもんね。
 彼女の周囲を取り巻く人物では、食えないたぬき親父である花守部長に、家族を置いてブラントン将軍と一緒に海外を放浪してる父親もいい味出していて妙な魅力がある。特に父親、日本にいる時に幼いちさとに云った言葉が、要所要所で大きな意味を持つことになって、案外と存在感が大きいです。彼の旅の友であるブラントン将軍が「む?」長らく謎だったんだけど、そういう意味だったのか!すっかり。
 掲示板の書き込み、顧客情報うんぬん、人間関係に疲れて離職するもの、、、などなど今どきの社会を上手く作品に織り込んでいるので、2時間ドラマにしたら面白そう。ぜひ見てみたいな。
 来月にはデヴュー作の『ラス・マンチャス通信』が文庫化されるとか。単行本を新刊で買ったまま積んでるので、そろそろ読まなくてわ(汗)。次回新作も楽しみです〜。