日明恩『ギフト』

ギフト

ギフト

 好意的に取り上げられている書評を読んで、とても期待して読んだ一冊。死者が見えて会話できてしまう少年と刑事を辞めてひっそり暮らす元刑事とが偶然出会ったことから幕を上げるミステリ風の連作集。
 なぜ死者は成仏できずにこの世に留まっているのか。2人で力を合わせてその理由を探るとともに、死者と残された生者との間のわだかまりをも解き解すというもの。どこかで見たことがあるような設定の話で、さほど目新しさは感じられなかったのだけど、この作者がこんな風に、重苦しい雰囲気で孤独な魂同士の出会いの物語を書いたことにまず驚かされた。
 各話、探ることによって明らかになった事実も決して心が晴れるものではないが、結果として、この2人にも救いと希望の光が差し込むところがいい。最後はやっぱり、、、予想した通りの展開になったが、死者と残された生者とが互いに互いを思いやる気持ちに胸打たれて、涙が止まらなかった。孤独の殻に籠ったきり、立ち止まったままどこにも行けなかった2人の選択もよかったー。
 日明恩作品に私、タフで元気で明るいイメージしか抱いていなかったから、この作品はとても新鮮だった。次回作にも期待!!