冨原眞弓『ムーミン谷のひみつ』
- 作者: 冨原眞弓
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/08/06
- メディア: 文庫
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大人の視点で読み解くムーミンの物語。ムーミンシリーズからエピソードを引用し、キャラクターごとに解説してくれる。何気なく読んでいたエピソードから浮かび上がってくるもの、読み取れるものに(あの彗星の話からだって!)「なるほどねえ」感心させられてしまった。たとえば、もしかして世界一仲がよい家族なんじゃないかと思うムーミン一家でさえも、作者によって
しかし、だまされてはならない。この家族、けっこうアナーキーである。ムーミンパパは、マイホームパパを自認するわりに、周期的にぷいと家を飛びだす放浪癖がある。ふだんは自分のことは後まわしにして、家族や客の世話をやく献身的なムーミンママも、じつは強烈な自我をうちにひめた<芸術家>だ。些細なことですぐ狼狽するパパとくらべ、ずっとふところが深い。大物である。 p.19〜21
ずばっと指摘される。その指摘が的外れなものではなくまさにその通りなので、読者としては絶えず目ウロコしながら読み進めることになる。<無職>なパパ、トーベの母がモデルのムーミンママのこと、一筋縄ではいかない愛すべき登場人物たち。主人公のムーミンからして母親っ子の甘えん坊だし、みんなどっか性格的に難があって、完璧すぎないところも魅力なのかな。
子供が読んでももちろん面白いけど、大人になってから読んだとしても大人なりの読み方ができて楽しめる懐が深い物語なんだなとしみじみ思った。読み終えた途端この本を手引きとして、ムーミンシリーズを最初から最後まで読み返してみたくなる。ムーミンファンだったら、読んで損はないんじゃないかな。
「あなたは誰が好き?」そうだな、やっぱりムーミンかな?それにニョロニョロにスナフキンも好きかも!
おまけ。大昔に福島県立美術館で開催された「ムーミンと白夜の国の子どもたち」展を観に行ったことがある。今調べてみたら1997年の開催だったから、トーベ・ヤンソンの生前に開催された展覧会だったのね。ムーミン関係の貴重な絵本原画もたくさん展示されていて、北欧の自然を背景とした幻想的で不思議なストーリもさることながら、やっぱり絵が魅力的なんだよなあと思ったっけ。ムーミンの前身が、風刺漫画の片隅に描かれているのを見た衝撃は今でも忘れられない。また開催してくれないかしらん。