井上荒野『甘い記憶』

甘い記憶―6 Sweet Memories

甘い記憶―6 Sweet Memories

 森永製菓が「森永チョコレート カレ・ド・ショコラ」キャンペーンのプレズント本として配布した「ひとり時間にカレ・ド・ショコラ 6ショート・ストーリーズ」に加筆修正して単行本化したというチョコレートがテーマのアンソロジー集。
 チョコレートといっても恋愛と絡めて、スウィートなものからビターなものまで様々。まるで少しづつ味わいが異なる6粒のチョコレートを独り占めしながら味わったかのよう。どれも美味で大満足。幸せ〜。
 6編の中で、謎めいた年上女性に惹かれる青年を描いてちょっぴりビターな井上荒野「ボサノバ」、らしくなく甘めだった川上弘美「金と銀」、まさに本領発揮。こういう作品を書かせたら抜群に美味い野中柊「二度目の満月」が印象に残った。
 井上荒野江國香織川上弘美小手鞠るい野中柊というそうそうたる女性作家の顔ぶれの中にあって、異色に感じられたのが吉川トリコ「寄生妹」。「チョコレート」がテーマでストレートに恋愛を持ってこず、姉妹間に流れる感情の揺れをコミカルかつしんみり描いてるところが絶妙。面白かった。これが初めて読んだ吉川作品だったりする。他の著作もチェックして読んでみたい。