江坂遊『鍵穴ラビリンス』

鍵穴ラビリンス (講談社ノベルス)

鍵穴ラビリンス (講談社ノベルス)

 江坂さんの新刊、出てたんですねー。すぐさま読んじゃわないと積みそうなので、さっそく読んじゃう。
 星新一の後継者たる江坂遊の魅惑の作品集、その第三弾。大半が異形コレクションで発表された作品で、それに書き下ろし26編を合わせ、全部で56編が収録されている。
 異形コレクションが毎回毎回お題が出され、そのお題に合った作品を書き下ろして発表するというホラーアンソロジーなため、作品のトーンも、それまでのノスタルジーや心温まる幻想譚といったテイストよりも、ブラックでビターでぞっとするようなおぞましさが強調されていたようだ(中には、テーマが分って読んだ方が面白みがより感じられる作品もあったー)。オチの切れ味に「すげえ」驚く作品があった一方で、何度読み返してもオチの意味が判らない作品があったのが残念だった。
 私が印象に残ったのは、恋のさや当ての結末は。幻想的で不思議ふしぎな「インディアン・ポーカー」、ああ、そこが伏線だったのねと意外性とシニカルな着地「新薬のおかげ」、某作家の某作品をなんとなく連想、オチのキレ味では一番かも「ホクロスイッチ」、最後から3行がすごくいい、にんまりの「白いカスタネット」、ノスタルジー系の幻想譚で美しいけど寂しくてちょっぴり恐ろしい「瑠璃色のびー玉」、ぎゅぎゅぎゅっと物語が凝縮されて詰まっていて、ショートショートなのが嘘みたいな「砂書き」に、艶めかしく色彩の鮮やかさ切なさが印象的な「浮人形」、星さんへの思いが切々と伝わってくる「エッサカ、ホイ」などなど。