柳広司『トーキョー・プリズン』

トーキョー・プリズン

　『ジョーカー・ゲーム』が面白かったので、同様に第二次世界大戦を扱っているこの作品も読んでみた。
　戦時中いとこで探偵事務所の相棒であるクリスが行方不明になった。終戦まもなく、依頼人からの依頼を受けてクリスの消息を調べるために来日したニュージーランド人のエディ・フェアフィールドは、クリスの行方を調査する見返りとして戦犯としてスガモプリズンに収容されているキジマの相棒となり、プリズン内で起きた不可解な事件の推理とキジマの失われた五年分の記憶を取り戻す手伝いをすることになる。調査をする上でキジマの無実を信じる親友イツオとその妹でキジマの婚約者たるキョウコと知り合い、キジマの無罪を証明するため、奔走することになるのだが、、、。
　スガモプリズン内で次々起きる不可解な事件の真相とは？キジマは記憶を無事取り戻すことができるのか、本当にキジマは捕虜たちを虐待し、殺してまでいたのか。キジマの無実は無事証明され、スガモプリズンから解放されるのだろうか？クリスの消息をエディは知ることができるのか？そんな興味で読み始めたのだが、とにかく、、、扱っている題材からして重たくて重たくて、読んでいるうちに胸が苦しくて痛くてたまらなくなってくる。戦争って戦争って戦争って、、、。戦争の真実、戦争がどう人間を変えてしまうのか。どこをとっても戦争責任が重たくのしかかってきて、読者たる私たちも決して目を背けることなく真摯に受け止めなくてはという気になってくる。調査が進むうちにだんだん打ち解けてきて、次第に芽生えていくキジマとエディの友情に、何度「もし戦争がなかったら、こんな立場で出会っていなかったら…」思ったことか。
　ミステリとしては。えっとスガモプリズン内で次々起きる不可解な事件の真相については早々に見当がついてしまったけど、キジマの記憶喪失に絡む謎については、「ええええ！それも伏線だったの！？」意外な伏線の存在に驚かされまくり。ラストに向けて伏線がばしばし回収され、パズルのピースが次々と嵌って行き、「キジマの物語」という一枚の絵が完成される様子にも。真相が二転三転したのちに現れたその物語とは、、、、、、、。
　『ジョーカー・ゲーム』とは扱う戦争のアプローチの仕方が異なるけれど、この作品もまた傑作だし、力作です。