平山瑞穂『桃の向こう』

桃の向こう

桃の向こう

 大学を卒業して約10年…ということは、物語の舞台となるのは1998年頃から2007年9月頃なのかな?バブル後の絶不況時に知り合い、青春を送った男女3人のその後の紆余曲折、あまりにも回りくどすぎる人生を綴った青春小説である。
 タイミング的にバブルに滑り込みセーフ、背景となる時代はもうすっかり大人だった私としたら、時代的に共感し損ねる部分が多々あるのは承知している。だけど…それにしても「だからどうした?」と言いたくなるほど、なんて回りくどいー。なんやこれ(汗)。
 就職も決まらず、お先真っ暗でまあどうしましょう、という時代だったのは知っている。でも登場人物らの不器用さ、彼らが感じる居心地の悪さは、時代特有のものではなく、あの年頃にはありがちな若さ、青臭さなんじゃないかと思いますが。

 冒頭、プロローグでもありエピローグでもある「桃の向こう」では頭でっかちで素直になれない不器用な来栖幸宏の視点で物語が綴られ、煌子との奇妙な交際も描かれる。続く第一章「浴衣姿の写真」では、遅れててきたバブル野郎、お調子もので要領よく人生生きていきそうなお気楽男、多々良晃司の物語が。2人の男子の物語を受け、それに対する半ば回答という形で、ミステリアスな美女…と見せかけて実はカタブツで不器用で一本気な仁科煌子が何を考えていたのか、その内面が綴られる第二章「シャボン玉の中へは」。彼女がどう生きようともがいていたのか。自分らしく生きることは、いつの時代でもまあ大変よね。
 続く「約束の聖地」「出席しない男」で、その後の男2人の姿が知れる。社会の荒波にもまれて丸くなり今さらな真理に辿り着いた面倒臭い男、相変わらずな男…ぷぷぷ。それにしても奇妙な縁で結ばれていたのねえ。
 個人的に煌子さんに感情移入しながら読んでいたので、彼女の扱いがぞんざいに感じられて、かなり不満。結局は煌子さんを媒介にした男2人の友情の物語、だったんですかねえ?なんだかな。