荻原規子『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』

 角川書店から創刊された新しいファンタジーレーベル“銀のさじ”*1の第一回配本のうちの1冊。
 山伏修験場として世界遺産に認定される山奥の玉倉神社に生まれ育った鈴原泉水子が主人公。腰までの長さのお下げ髪で引っ込み思案で内気な泉水子はどこかクラスから浮いている存在で、仲が良い友人ようにごく普通の女の子らしくしたい自分を変えたいと思っている。寮に入り、友人と一緒に地元の高校に進学したいと願っていたのだが、突然東京の高校に進学するよう薦められる。突然のことに戸惑う泉水子。進学を嫌がる泉水子の元に、父の友人の息子である深行が現れる。なんでもそれまで通っていた中高一貫進学校を無理やりやめさせられ、こちらの中学に転校させられたのだという。父親に反発し、その元凶である泉水子への敵意を隠さない深行。でも深行は泉水子の下僕として一生添わなければならない定めなのだという、、、。
 荻原さんの新作は、清涼な山の空気に身が締まるような現代日本を舞台にした和風ファンタジー。泉水子の造形からして、三つ編みの眼鏡っこで内気だし。かなりのツボ(笑)。一見すると何もできない冴えない女の子が実は謎めいた特別な存在だった、、、というのは王道すぎるほど王道な物語かもしれないけど、それが陳腐に思えないのは、泉水子や深行に深行の父親雪政など登場する人物らがみな個性的で魅力的なこと、現代が舞台なのに修験道や山伏といった古から伝わる山岳宗教、信仰が物語に盛り込まれているからだと思う。
 個人的に興味深いのは、泉水子と深行の関係の変化かな。最初の出会いからして最低最悪だった2人(笑)。この2人がどう気持ちを変化させて自分たちの運命に立ち向かっていくのか。内気な泉水子がどんな女性に成長するのかもひっくるめて、シリーズのこれからが楽しみ。
 この巻は長い物語のプロローグで、かつ登場人物紹介的内容だったと思う。次は高校生になった泉水子に逢えるのかしら。次巻こそ泉水子の母親である紫子が登場してくれるんじゃないかと楽しみにしてます(ラストシーン、思わず『風神秘抄』を思い出して、胸が熱くなった。じーん)。