柄刀一『ペガサスと一角獣薬局』

ペガサスと一角獣薬局

ペガサスと一角獣薬局

 南美希風は、姉が編集を務める雑誌の“世界の伝説と奇観シリーズ”の取材で世界を旅するプロのカメラマンだ。彼が取材で訪れる先々で、伝説と伝承と幻獣に彩られた不可思議な殺人事件が起こる。
 「龍の淵」ではドラゴン、「ペガサスと一角獣薬局」ではペガサスとユニコーンという具合に幻獣が登場し、そしてその最中に起こる殺人事件。幻獣が絡んで、一層幻想的でファンタジックになった謎をどう合理的に説明するのか。どの話も謎解きをわくわくしながら読んだ。
 収録された5編の中では、北欧のフィヨルド、神話の息吹が今なお残る田舎の村を舞台に“ドアが溶接された小屋の中から発見された白骨死体”という、いわば究極の密室もの「光る棺の中の白骨」の謎解きに一番興奮した。もしかして、トンデモな力技??…な気がなきにしもあらずだけど、舞台背景のせいで、なんとなくそれもありかなと納得させられてしまう(汗)。表題作はメインの謎よりも、最後の最後に導き出された真相に心が温まる。あれがそう絡んでくるなんて。まったくもって心憎い。ユニコーンに関する考察がなかなかにユニークで、それもありかなと納得させられそうなのが怖い。
 続編、希望!更なる幻獣絡みの魅惑的な謎の登場を、更なる美希風による華麗なる名推理を期待してやまない。