12月に読んだ本

 ぼーーーーーーーーーっとしていたら先々週の分の読書メーターのまとめを貼り付け忘れてしまいました(涙)。先週分のデータはまだ取れるようだけど、年末なので(?)、12月の1か月分の読書データをペタペタ。これからは気をつけます。しゅん。
12月の読書メーター
読んだ本の数:31冊
読んだページ数:7768ページ

赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)赤い星 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
いかにも高野史緒らしくて個人的には満足。色彩が乱舞し煌びやかで豪奢、長編ネタがいくつもブチ込まれてるようで、物語自体も贅沢極まりない。仮想空間の使い方も巧く、さりげなく散りばめられた小ネタも楽しく読んだけど、下敷きの一つとなったある作品を知らないと「あれ?あれ?」違和感を感じてしまうのが惜しかった。もっと長くなってもいいから、もちっとエピソードを重ねて書き込んで欲しかったなー。
読了日:12月31日 著者:高野 史緒


伯林星列伯林星列
二・二六事件」が成功していたら…の歴史改変もの。1936年というキナ臭く危うい時代、各国の思惑が交錯する中で時代に翻弄される操青くんの数奇な運命を描く。作者の思い描くビジョンには戦慄したが、、、いろいろとお勉強になるなあ(爆)。この世界の5年後、10年後がものすごく知りたい。
読了日:12月31日 著者:野阿 梓

サイゴン・タンゴ・カフェサイゴン・タンゴ・カフェ
どの作品にも中心にタンゴがある恋愛小説作品集。そして長編並の濃密さに圧倒される。身を切られるような切なく狂おしい愛にタンゴの調べがよく合う。交感される官能に身が震えるかのよう。どの話もいいが、「ドブレAの悲しみ」、それにあれこれ想起させて胸が苦しくなる表題作が好き好き。
読了日:12月30日 著者:中山 可穂

SF&ファンタジー・ガイド―摩由璃の本棚 (現代教養文庫)SF&ファンタジー・ガイド―摩由璃の本棚 (現代教養文庫)
乱舞する★マークに軽くイラってするけど、極上この上ないSF&ファンタジーブックガイド。既読な本は「うんうん。そうそう」力いっぱい頷きたくなるし、未読な本は今すぐ読みたくてたまらなくなる。ちっちゃい頃から耽読してきた人なのねえ。半端じゃない読書量に圧倒される。書誌情報に巻末に索引があるのが嬉しい。これが絶版とはねえ、、、(涙)。
読了日:12月28日 著者:神月 摩由璃


草祭草祭
美奥というこの世にあってこの世にないような闇が濃い不可思議な土地を巡る連作集。時空を超えて語られるのは、人の想いの哀しさ切なさ。恒川さんの幻想的で透明感あふれる寂しさと哀切の物語を堪能した。どの話も大好き。漫画化するなら、ぜひ漆原友紀さんで!
読了日:12月28日 著者:恒川 光太郎


“文学少女”と恋する挿話集 1“文学少女”と恋する挿話集 1
本編の空白を埋めるかのようなサイドストーリ集。どんなに短いお話でも手抜きなし。しっかと文学作品と絡めて、しかも作品のテーマと物語とが共鳴し合っているところが相変わらず素敵。新キャラ牛魔王と美羽ちゃんのお話、そして最後の遠子先輩のお話が好きー!次巻発売が待ち遠しい!
読了日:12月26日 著者:野村 美月

女に生まれてみたものの。女に生まれてみたものの。
大人の女なのに、なぜか“大人の女”を目指す!…いつもと同じような脱力体験エッセイかと思ったら!ついに来るべき話が来たのか。第三回と第四回、そして第五回第八回が忘れられない。 「やった方は忘れる」「戦争に擁護なし、事実あるのみ」会津と長州だけでなく、色んな諍いに当て嵌まるんじゃないだろうか、これ。この本はとにかく、村田嬢がMVPです。
読了日:12月26日 著者:菅野 彰

太陽の涙 (Coffee Books)太陽の涙 (Coffee Books)
現代社会を風刺しつつ新しく紡がれた創世譚。理不尽さに怒りを覚えつつも多数の声に消されてしまう少数の哀しみ切なさが胸が迫る。でも、神々しいまでに美しい物語で。大島梢さんのイラストとのコラボレーションが素晴らしい。
読了日:12月25日 著者:赤坂 真理

泥(こひ)ぞつもりて泥(こひ)ぞつもりて
平安時代でもさほど馴染みがない辺りが舞台背景だったから、乗るまでちょっと時間がかかったけど、乗ったら最後止まらなくて一気読み。史実と虚構を絡ませ膨らませ、事実こうであったのかもと思わせる説得力がある物語だ。政治に翻弄され、帝の寵愛を競いあわねばならない女の情念と官能と哀しみが滴るよう。そして男もまた。ただただ圧倒される。作者は自分の資質にぴったりな題材をよく見つけたなと感心した。
読了日:12月25日 著者:宮木 あや子

橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ
深川を舞台に橋のある光景とその物語。どの物語も投げかけられるものが温かく柔らかくて、読み終えると優しい気持ちになる。琴線に触れたのは「大富橋」「永代橋」「八幡橋」あたり。もうちょっと…と思う作品もあったけど、さすがに青少年を主役に据えた作品は読ませるなあ。
読了日:12月23日 著者:橋本 紡

笑うヤシュ・クック・モ笑うヤシュ・クック・モ
ファンタジーかと思ったら、、、非ファンタジーだったのね。でも読んでる最中は「赤の王妃」を探し求める物語の迷宮に皓雅らと一緒に迷い込んだよう。日常から切り離された非日常を手探りで彷徨う感覚を堪能した。手のうちが明かされればなんという話ではないのに、登場人物らの屈託にマヤ文明を絡ませ読ませる読ませる〜。ざらつく感触が残るものの読了感は悪くないし、読んで大満足。面白かった!
読了日:12月21日 著者:沢村 凛


海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
「いま、息をしている」読みやすい言葉で、読みたくない作品集だった。軽やかさと可憐さと少しの哀しみ寂しさを湛えた繊細な幻想譚が特に好き。お気に入りは表題作、「セーヌ河の名なし娘」「バイオリンの声の少女」それに「飼葉桶を囲む牛とロバ」でしょうか。
読了日:12月20日 著者:シュペルヴィエル

光
白夜行』と比較されるかもしれないが“圧倒的で理不尽な暴力に襲われた時、あなたならどうするのか”決断を突き付けられる気がして、震えるほど怖ろしい小説だった。彼らはこうして戦った。さあ、私だったらどう戦う?暴力の連鎖を断ち切ることができるんだろうか?
読了日:12月19日 著者:三浦 しをん

あなたの獣あなたの獣
井上荒野が描くヘタレ男は、どうしてこんなに愛しいんだろう。櫻田哲生という恋にも仕事にも家族にも不実で、さほど執着なくふわふわ漂うがごとく生きる男の姿を、10の時系列バラバラに並べた不穏な短編で描きだす。エピソードを重ねることがまるで色を重ねるかのよう。読み進めるうちにどんどん薄っぺらかった櫻田に厚みが出てくるのが面白かった。彼の真心とは結局…。「桜」「南」「海」「声」が印象的。
読了日:12月19日 著者:井上 荒野


虹の獄、桜の獄虹の獄、桜の獄
「七色の犯罪のための絵本」と「しあわせな死の桜」が収録。とにかく「死の桜」がめっちゃ好み!桜のはかなさ可憐さ、美しさの陰に潜む怖ろしさ、甘美な死への誘い、少年の残酷さ…もろもろが絡み合ってラストへと収斂していく。ただただうっとり。建石さんによる硬質な美をたたえた挿絵が一層作品世界の美しさ儚さを強調していて、この上ない。
読了日:12月18日 著者:竹本 健治

彼女の知らない彼女彼女の知らない彼女
自分探しの物語だかなんだか知らないけど、やっぱりこれはズルいでしょう。荒唐無稽すぎるにほどがある。
読了日:12月17日 著者:里見 蘭
金子國義の世界 (コロナ・ブックス 141)金子國義の世界 (コロナ・ブックス 141)
ページから甘美が滴るみたい。俗世間から隔絶されて時が止まったような濃密な金子ワールドを堪能した。部屋の様子やら何やら丸ごとが作品のよう。知っているようで知らなかった「金子國義」の足跡を一から教えていただき興味深かった。大好きな金子作品もたっぷり。そして金子國義のミューズもたっぷり。創作の源に触れさせていただいた気分に。
読了日:12月16日 著者:金子 國義

覇者と覇者  歓喜、慚愧、紙吹雪覇者と覇者 歓喜、慚愧、紙吹雪
(未完)に涙。あと3章とちょっとだったのに、、、本当に残念。どう物語を締めくくるつもりだったのか、断片だけでもいいから、知りたかった。3部作で完結ではなく、できることなら海人や椿子の物語をもっとずっと読みたかったぐらい。結局読者の数だけその先の物語があるのかも。
読了日:12月15日 著者:打海 文三

どこから行っても遠い町どこから行っても遠い町
東京の東にある昔ながらの商店街がある町を舞台にした物語集。ちょっとづつ時間をずらしながら、全体がゆるゆると繋がっている感じがたまらない。連作集の中で描かれる人と人との繋がり、色んな関係性を興味深く読んだ。「長い夜の紅茶」の弥生さんと時江、「小屋のある屋上」の平蔵と源二、そして「四度めの浪花節」の艶めいた央子さんと廉の関係が特に印象的。でも、どの作品もずっと物語に身を委ねていたいぐらい大好きだった。この締めくくり方も作者らしくて、胸が思わず熱くなった。
読了日:12月14日 著者:川上 弘美


訪問者ぶたぶた (光文社文庫)訪問者ぶたぶた (光文社文庫)
ドアを開けたら、そこにぶたぶたが居る、、、をつい夢見てしまいそう(笑)。今回、様々な職業に就いてるぶたぶただけど、やっぱり最初の話が一番好き!存在そのものが奇蹟、出会った人をちょっぴり幸せにしてくれるぶたぶた。物語を読んだ私まで幸せな気分になった。ぶたぶた、大好き!
読了日:12月13日 著者:矢崎 存美

詩羽のいる街詩羽のいる街
詩羽というある才能の持ち主の女性を巡る連作集。ちょっと意識を変えるだけで世界を変えられるのだと、詩羽のいる街に住んで触媒されてみたいとさえ思えたほど。でも、、、4話目でちょっと引っかかってしまった。ま、善意だけの存在でないから詩羽なんでしょうが。巻末に参考資料一覧があるのが嬉しい。どの本がどこでどう使われたのか、見つけ出す楽しみがたまらない。
読了日:12月11日 著者:山本 弘


プラスマイナスゼロプラスマイナスゼロ
プラスマイナスゼロな凸凹女子高生トリオが活躍するドタバタ学園青春ミステリの連作集。ドタバタ度が強くてくすくす笑えるものの、そこはやっぱり若竹七海。ブラックな味わいがなんとも言えない。女子高生トリオの不可思議な縁で結ばれた厚い友情の物語としてもミステリとしても大満足。他の作品とのリンクはあったのかな?
読了日:12月11日 著者:若竹 七海

神様のいない日本シリーズ神様のいない日本シリーズ
部屋に閉じ籠った息子に対して父親がその原因となった祖父の物語、しいては自分の物語を饒舌にしゃべってしゃべってしゃべくり倒してる家族小説だ。父系の血筋を辿る試みが面白い。「走れメロス」と「ゴドーを待ちながら」の使い方に感心した。なるほどね!
読了日:12月10日 著者:田中 慎弥

地図男 (ダ・ヴィンチブックス)地図男 (ダ・ヴィンチブックス)
口当たりのいい古川日出男みたい。俺が偶然遭遇した地図男の、その地図男によって地図に書き込まれる東京を舞台にした膨大な物語の存在という入れ子というか重層構造にはぞくぞくするほど興奮した。だけど最後、ヘンにオチをつけてまとめようとしなければよかったのに。残念だし、勿体ない。でも続きがあるなら読んでみたい。
読了日:12月09日 著者:真藤順丈

儚い羊たちの祝宴儚い羊たちの祝宴
米澤版奇妙な味の物語というかブラック全開の連作集。お気に入りは「玉野五十鈴の誉れ」と表題作。守子さんと五十鈴さんがいいわあ。ブックガイドとしても有効かと。
読了日:12月08日 著者:米澤 穂信

退出ゲーム退出ゲーム
読んでいて米澤穂信古典部シリーズ」を思わず連想。変人揃いの登場人物らの会話がとにかく楽しく、けらけら笑いながら読んだ。「青春」と「謎」のバランスがいい。表題作の巧さに唸り、最後の「エレファンツ・ブレス」に衝撃を受けた。徐々に部員が集まりつつある吹奏楽部、普門館目指して頑張って!続きが待ち遠しいシリーズが一つ増えた。
読了日:12月07日 著者:初野 晴


元職員元職員
タイトルが利いている。バンコクロケして2時間ドラマにしたら面白そう。『今のあんたは偽物だ』。
読了日:12月05日 著者:吉田 修一
あの空の下であの空の下で
「旅」をテーマにした短編と吉田さんご自身による旅の光景を綴った旅エッセイが収録。作品ごとの「旅」のとらえ方が面白い。短いながら人生が友情がぎゅぎゅっと詰まってる「東京画」、いかにもだけど「ベスト・フレンズ・ウェディング」「流されて」が好き。それにしても旅に出たくなる〜!
読了日:12月05日 著者:吉田修一

未見坂未見坂
『雪沼とその周辺』と同じ世界観を共有する物語。地方の小さな町で暮らす老若男女様々な人々のささやかながら、でも大切な出来事を静謐で優しい筆致で描く。読んでいて思ったのは登場人物らに投げかける作者の慈愛に満ちたまなざしだ。時のかさなり。語りすぎず読者に委ねられる余白もまた心地よい。人あたりのよい文章にはほっこりさせられるが深くて、心の奥底にまで沁みてくる。なんでもない文章なのに、何度琴線に触れ泣かされそうになったことか。「雪沼〜」と合わせてぜひ!
読了日:12月04日 著者:堀江 敏幸


星のしるし星のしるし
29歳未婚の果絵の日常を描く小説。柴崎さんの「まるで小説として書かれた自分の日常を読んでる」かのようなフツーさ加減が好き。日常だからこその愛おしさ。派手さはないけど、日常を過ごすうちに起こる感情の起伏を繊細に丁寧に描いているとこに好感が持てる。主人公果絵の視線が好き。正月から花見の頃までが切り取って描かれているが、もっともっとずっと読んでいたかった。
読了日:12月03日 著者:柴崎 友香


あげくの果てあげくの果て
『鼻』でも思ったけど、小説の描き方が本当に巧い。単なるブラックな話ではないところに感心してしまう。痛烈だった表題作も良かったけど、なんといっても世相&社会風刺も絡めた「最後の言い訳」にとどめを刺された。お見事。
読了日:12月01日 著者:曽根 圭介



読書メーター