津原泰水『たまさか人形堂物語』

たまさか人形堂物語

たまさか人形堂物語

 祖母の形見であるたまさか人形堂を継ぐことになったリストラOLの澪。押しかけアルバイトで俺様キャラの人形マニア冨永くんと腕が立つものの経歴すら謎の職人師村さんという有能な2人の社員のおかげで、潰れそうだった店も何とか盛り返し、そこそこ繁盛することに。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も店には様々な思いが込められた人形が持ち込まれる、、、。
 たまさか人形堂に修理で持ち込まれる人形から物語が生まれる。澪、冨永くん、師村さんの三人を始め、登場人物らのテンポがいい掛けあいが楽しい、ちょっとした日常の謎的雰囲気もある人形をモチーフにした連作集だ。この作者にしたら口当たりがいい作品ながら、扱うのが人形だけあってそんな軽くて明るい雰囲気から時折ちらつくのは人間の狂気だの幻想的で耽美な空気、おどろおどろしい情念、背徳のほの暗さ、、、。そんなところがやはり、いかにもこの作者らしいなと思う(そちら方面に淫してくだされば好かったのに、と思わないでもない)。
 途中から謎の人物師村さんの正体探しに話がスライドしてしまうのがやや惜しい気がしたものの、扱う人形も和洋バラエティに富んでいて、蘊蓄すら楽しかった。続編もあるのかな?期待したい。