2009年4月6日 - 2009年4月12日の読書メーター

2009年4月6日 - 2009年4月12日の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1336ページ

死者の百科事典 (海外文学セレクション)死者の百科事典 (海外文学セレクション)
全てを味わい尽くせた自信はないが、何度も何度も折りにふれて読み返したくなる1冊になりそう。作品ごとに文体を変えるなど趣向を凝らした9つの(愛と)死を巡る短編が収録されていて味わい深い。好みだったのは、旅先で訪れた図書館で世界中のあらゆる無名の死者の生涯を記録した「死者の百科事典」と遭遇、夜こっそり亡き父の記録を読み耽るさまを娘の語りで描いた表題作、死者のまどろみを描いた「眠れる者たちの伝記」、一冊の本「謀略」を巡る流転の物語「王と愚者の書」など。いい小説を読んだとしみじみ思った。
読了日:04月06日 著者:ダニロ キシュ


スコープ少年の不思議な旅スコープ少年の不思議な旅
スコープを覗きこんだ先には無限の空間が広がる。光線の当て具合で表情が変化し、閉じているのに開いている不思議な感覚がたまらない。スコープ少年のようにこの不思議な空間に入り込んで夢幻的な世界を旅したくなるし、オブジェの重みを掌で感じながら、めくるめく小宇宙を実際に覗きこんでみたくなる。どれか一つだけくれるというなら、私は「秘かな中庭1」が欲しー。
読了日:04月07日 著者:巖谷 國士,桑原 弘明


小川洋子の偏愛短篇箱小川洋子の偏愛短篇箱
お気に入りの短篇だけ詰めたとっておきの宝石箱をこっそり見せていただいているようなアンソロジー。どの作品も不穏なざわめきに満ち満ちていて一筋縄ではいかない作品ばかりで驚く。“小川洋子”の見方が思いっきり変わりそう(笑)。供された作品の余韻を味わいながら読む、慈しむようなコメントがいい。どの短篇もよかったが、「兎」「春は馬車に乗って」「みのむし」「お供え」にはとにかくたまげた。この1冊からぐんと読書が広がりそう。そして、私だけの「偏愛短篇箱」が作りたくなってむずむず(笑)。
読了日:04月08日 著者:小川 洋子


夢の棲む街・遠近法 (1982年)夢の棲む街・遠近法 (1982年)
言葉によって構築された世界は、言葉によってまた崩壊の時を迎える。結晶のような硬質な美をたたえた文章で細部にまで気を配って描き込まれたことによって命を吹き込まれた異界は、うっとりするほど魅惑的で美しい。滅びを迎えるそのさまも。久しぶりに読み返した「夢の棲む街」の豊かな幻想性、歪みゆえの美もよかったが、何といっても「遠近法/遠近法補遺」に尽きる。幻視者、ファンタジストとしての山尾悠子が堪能できる一冊だと思う。
読了日:04月10日 著者:山尾 悠子


深山に棲む声深山に棲む声
「???」点と点が繋がって線となり物語が立ち上がってくる快感。なぜ昔話が生まれるのか、そしてなぜ人から人へ語り伝えられていくのか。「ああ、こういうことなんだな」と描き方を面白く読んだ。今も語りつがれている昔話の陰にもこんな風に、、、とついつい思いを馳せてしまう。
読了日:04月11日 著者:森谷 明子


このあいだ東京でねこのあいだ東京でね
こんな「東京」小説を読んだのって初めて!意表を突く手法で「東京」をトレースし描き出す。表題作は“東京に家を購入する”と仮定し、不動産的見地から東京の街並みを眺めるというもの。土地探しからいつの間にか逸脱していって、まさかローンの組み方にカード取得の方法まで教えてもらうことになろうとは(笑)。メリハリある物語性や独特の文体で読ませるというよりも“どんな風にいかに描き出すか”その試みが意欲的でどの作品も面白かった。素直じゃなくてヘンに一筋縄で行かないところがいいなあ。次回作にも期待〜。
読了日:04月12日 著者:青木 淳悟

読書メーター

 延長に延長を重ねた『死者の百科事典』をようやく読了。読まずに返さなくてよかったー。表題作が特に好み。小川洋子編『小川洋子の偏愛短篇箱』は、買って読んでよかったと思えるアンソロジー集だった。一筋縄でいかない深みのある作品ばかりが集められているけれど、特に金井美恵子の才能に打ちのめされた。ああ、家にあるんだから積んでないで読まなくちゃ!!久々に山尾作品を再読したのは、「偏愛短篇箱」に誘発されてだったりして。今年こそ、延び延びだった新作が読めますように。