前田司郎『夏の水の半魚人』

夏の水の半魚人

夏の水の半魚人

 私より世代が下った平成の時代の東京の子供の原風景とはこんなものなのかと興味深かった。
 海子のこと、母のこと、魔法のこと、仲違いした友達のこと、小学5年生の日常に泡立つ不穏さが見え隠れしたまま、幻想的なラストに雪崩れ込む。でも「え?それでお終いなの?」その後が気になったことがちらほらあったので、もうちょっと描いていただいてすっきりしたかったという気がしないでもない。
 さりげない描写に煌めきがあって、他の作品も読んでみたいと思わせる魅力がある作品だった。装画が素敵すぎる。