森見登美彦『宵山万華鏡』

宵山万華鏡

宵山万華鏡

 装丁が作品の全てを物語ってる。宵山の祭を舞台にした6つの物語。日常から逸脱した祭というハレの場を、裏表の物語を重ねることによって描き出す(6つの物語同士がすれ違うさまがいいんだな)。祭の喧噪にふわふわ浮き立つだけじゃなく、心細さやひんやりした魔にいつの間にか引き寄せられてしまう怖さも描かれ興味深い。
 とはいえ、全てを飲みこむ締めくくりが抜群に上手いのだ。華々しくもマジカルなひととき。たまらなくキュートでチャーミングで、私にとって大好きな作品になりそう♪ 
 先行作品とのリンク箇所を探すのもまた一興。やはり京都の街が舞台の物語はこの作家の真骨頂だな、と痛感した。