東直子『薬屋のタバサ』

薬屋のタバサ

薬屋のタバサ

 川上弘美作品以上にすごく不思議な感触の物語。タバサの薬屋がある町自体が、ヒロインの意識が生み出したものなんじゃないかと思えてくる。生と死の狭間にあって心揺らす人間のひとときの避難所のようだった。
 こんな風に血が命が繋がり次代へと受け継がれていくのは、喜ばしいような怖ろしいような。ラストをどう捉えたらいいのか、まだまだ混乱中。
 一見穏やかで優しい印象を受けるけれど、あのすべてを飲みこみ底が見えない池のようにつかみどころがなく得体がしれない。そんなところに心惹かれる物語。