倉橋由美子『大人のための残酷童話』

大人のための残酷童話 (新潮文庫)

大人のための残酷童話 (新潮文庫)

 誰もが知る童話を倉橋由美子が語り直すとこうなる。口当たりのいい甘ったるい物語が、毒とエロスのスパイスのおかげで、大人の味覚に合う物語へ変貌を遂げる。印象に残ったのは「人魚の涙」「血で染めたドレス」「かぐや姫」「鬼女の島」「天国へ行った男の子」「飯食わぬ女異聞」「人は何によって生きるのか」など。剥き出しにされた人々の欲望がいっそ清々しいし、感情移入することなく冷徹に描き出す筆致も素晴らしい。