長野まゆみ『となりの姉妹』

となりの姉妹

となりの姉妹

 装丁からして凝りまくり(姉妹なのか、紙に少女らの透かしが入ってるなんて!)、細部に至るまで作者の美意識が行き渡っている豪華で贅沢な一冊。内容はというと、まるで『箪笥のなか』を裏返したような兄妹の機微を、ほんの少しの不思議を絡めて描く。飄々としているようで一筋縄でいかない立彦の存在感がとにかく強烈。
 平成ではなく昭和の時代に生きているかのような登場人物、とくに佐保の母には背筋が伸びるかのよう。正しく生活しなきゃ、て気になる。まず油揚げ煮るところから始めて、お稲荷さん作って食べたい。
 個人的に気になったのは、立彦の息子のショウマだけ、なぜショウマと片仮名だったのか。佐保、立彦、逸子、咲也と、それぞれ名づけに凝っていたのに。
 最後まで読んではじめて、タイトルの意味が腑に落ちるところが素敵。いつまでもいつまでも浸っていたい、心地よい作品世界だった。出てくる食べ物がみんな美味しそうなのも、長野作品の特長かと