本日の読み終わり 吉野万理子『雨のち晴れ、ところにより虹』

雨のち晴れ、ところにより虹

雨のち晴れ、ところにより虹

 前作はファンタジックな設定の物語だったけど、本作品は鎌倉・湘南あたりの光景をふんだんに盛り込んだ6話収録の連作集です。いや〜前作よりすんごく巧くなってません?ちょっと善人くさいのが鼻につくけど、隙のなさ加減が素直にいいと思えるお話でした。物語がとても映像的なんですよね。鎌倉あたりを舞台にした、よく出来たドラマを見てるかのよう。
 いろんなシチュエーションでさまざまな気持ちのすれ違いを描き、一番いい方法で和解し心がほぐれるようすを描いてるんですが、その経過で読ませるんですよね。どうなることかとヤキモキさせられて、ラストで心がじんわり温かくなる心地良さを味わえる。タイトルから「“雨降って地固まる”で、いろいろあったけど、でもどの話も結局はハッピーエンドで終わる話なのね〜」と思いつつ読んでたので、表題作でビックリ!いいですね〜この話。この話が一番好き。 某人物で第5話以外リンクしてるんですが、もしかしたら本作品集の真の主人公は、この人物だったのかもしれません(吉田修一の『日曜日たち』みたいだ)。時系列に作品が並んでるので、「もしや…」が叶わなかったと知り、ちょびっと胸が痛かったけども。