昨日の読み終わり 梶尾真治『時の“風”に吹かれて』

時の風に吹かれて

時の風に吹かれて

 短編集。切なさに胸がぎゅっと締めつけられるものから、ブラックなもの、おバカなドタバタコメディまで、色んなテイストの梶尾真治作品が楽しめる1冊。好みだったのは、表題作で『クロノス・ジョウンターの伝説』を思い起こさせるタイムマシンもの「時の“風”に吹かれて」。これ、“風”の使い方が抜群に巧いですねえ。甘やかな郷愁となんともいえないやるせなさが胸に沈む「その路地を曲がって」、ブラックなオチが強烈な「ミカ」、都市伝説の楽屋落ち…と見せかけて、実はこれ、このオチが書きたくて書かれたんでしょ!?(笑)の「わが愛しの口裂け女」、それに少年時代を過ごした分校が水没してしまう。どうしても名前が思い出せない一人の友人の名前を思い出そうとするんだけど…悲しいけど、とても優しい物語で、胸にじんわり温かいものが広がる「再会」も印象深いです。そうそう、「声に出して読みたい事件」は、声に出して読めませんでした。早々に脱落(涙)。