本日の読み終わり 絲山秋子『沖で待つ』

沖で待つ

沖で待つ

 ああ、今までに読んだ絲山作品では、一番好きかもしれない。「勤労感謝の日」と「沖で待つ」収録の作品集。絲山さんの経歴を知る読者は、この2篇の小説の主人公たる女性に作家絲山秋子を見て、にんまりするんじゃないだろうか。
 特に「勤労感謝の日」、36歳無職の主人公の対極にあるかのような「仕事が趣味です」男性との見合いの席での歯に衣着せぬ本音の部分は、思わず拍手喝采。良くぞ云ってくれたと、拍手喝采&気分爽快に。にまにま。その後の行動も格好良すぎる。女性にはものすごく共感される作品では。 
 尖がっていた前作とは雰囲気ががらり変わって「沖で待つ」は、同期入社男性との友情以上恋愛未満、だけど何よりも強い絆を柔らかい筆致で描いていて、ほろりとさせる。性別を超越した…なんといったらいいのか…連帯感?私には残念ながら連帯感を抱いた同期はいなかったけれど、でも、なんとなく判る。そんな絆で結ばれた同士は、妻よりも肉親よりも、もしかしたら近しい存在なのかもしれない。
 エッセイ読んだ時も思ったけど、絲山さんの会社ものってやっぱり面白い。次回作にも期待です。