本日の読書 遠藤徹『くくしがるば』

くくしがるば

くくしがるば

 「くくしがるば」と「おがみむし」の2編収録された作品集。
 「くししがるば」は“「ギリシア神話源氏物語」をベースに、知ってる人だけ知っているネタだけで出来たある種のパロディ作品”の趣き。荒唐無稽なホラ話なので、あれこれ深く考え込まずに楽しんじゃったもの勝ちだと思う。文章は滑らかかつ饒舌で、だんだん読んでるうちにハマってくる。ラストの終わり方がとても素敵。
 「おがみむし」は不可解で不思議、そしてちょっぴり不気味な物語。男に心臓を丸のみにされ、従順に男の元で暮らす女たちの物語。ぞわぞわして、ねっちょり不快感が残るラストが、非常に印象的だった。
 表題作なんて日本ホラー大賞受賞者とは思えない愉快な作品で、遠藤徹とはどんな作家なのか、ますます判らなくなってくる。だからこそ、面白い。次回作ではどんな作品が読めるのか、期待大!(あ、この作品集はまったく怖くないので、ホラー作家だと思って敬遠してる人にも、安心して読めるかと…表題作はね/汗)。