北森鴻『香菜里屋を知っていますか』

香菜里屋を知っていますか

香菜里屋を知っていますか

 香菜里屋シリーズの完結編だとは知っていたけど、本当に完結しちゃったのねえ。フィナーレを飾るに相応しい内容だったと思う。
 ビアバー香菜里屋の自慢は4種類のビールと絶品料理。そして店主の工藤による謎解きだ。何かいわくありげな過去の持ち主だとは(それとなく仄めかされるから)うすうす思っていたけど、香菜里屋に持ち込む謎をいつも解いていた工藤自身が解かれるべき謎になった、、、。収録された「ラストマティーニ」から読み進めていくと、工藤によって解かれた謎、そこから浮かび上がってきた真相と、工藤自身が抱える問題とが密接に関連しているようで、何やら暗示的。そして、ついにその時が。
 香菜里屋の名前に、そんな理由があったとは。しみじみ。それにしてもこの本、特に表題作は、いかにも北森作品らしい遊び心に満ちた贅沢な趣向だったと思う。
 香菜里屋を知っていますか。ええ、知ってますとも。香菜里屋に乾杯!