伊坂幸太郎ほか『Re-born はじまりの一歩』

Re-born はじまりの一歩

Re-born はじまりの一歩

 “気分一新、新生活のスタート”をテーマとした競作アンソロジー集。新しい環境で新生活をスタートさせる人が多い春のこの季節に読んで、ちょうどいいタイミングだった。どの作品もいかにもその作家らしくて、どう読ませてくれるのか、次から次へと作品を読むのが楽しかった。
 やっぱり伊坂幸太郎は巧いね。いかにも伊坂さんらしい「はじまりの一歩」の物語だ。家族解散の日に起こった突拍子もない出来事を切り取って見せてくれる「残り全部バケーション」は、力みがなくいい感じでリラックスしていて、新生活を面白がって楽しんじゃおうぜみたいなメッセージも感じる。ただ、腹七分目ぐらいのところで終わっちゃって、食い足りない気分。もうちょっと読みたかったんだけど、、、これで終わりなんだろうなあ。残念。伊坂さんて短編より長編向きな作家なのかもしれない。
 中島京子「コワリョーフの鼻」も良かったー。さすが『FUTON』の作者!ゴーゴリ「鼻」に『鼻行類』、芥川の「鼻」まで使って、最初から最後まで鼻鼻鼻、鼻のオンパレード。で、どう落とすのかと思うと、、、チャーミングで心温まる夫婦愛の物語で。好き好き好き。『鼻行類』の本を持ってて読んでるダンナさまも素敵。こーんな夫婦の会話に憧れるなあ。ほわ〜ん。
 豊島ミホ「瞬間、金色」は、いかにも豊島ミホらしい作品だった。中学2年で知り合ったシンジュとナナミの友情の物語で、身も心もしんどい時期をメインに書いてるんだけど…こういう思春期の女の子同士の生臭い軋轢や絆の物語を書かせると、本当に豊島さんて巧い。感心はするものの、そろそろ違う物語も読みたいなーと思ったりもする。
 瀬尾まいこゴーストライター」、確かに微妙に『戸村飯店青春100連発』の冒頭とは違うー!ああ、すんごく良かっただけに、先にこちらの作品から読めばよかったと、後悔ばかり。
 初めて読んだ福田栄一「あの日の二十メートル」に、宮下奈都「よろこびの歌」も想像の範囲だったとはいえ、それぞれに良かった。平山瑞穂「会ったことがない女」は、、、どう2人の物語が結びつくのかと思ったら、、、とにかく驚いた。