角田光代ほか『JOY!』

JOY!

JOY!

 かつて「ガーゼ・スキン・ノイローゼ」なるメジャーデヴューしたものの、一発屋で終わったパンクバンドがありました。タイトルでもあるJOYとは、その「ガーゼ・スキン・ノイローゼ」のボーカルの名前。JOYを巡る5人の女たちの物語を5人の作家がそれぞれに描き出す。この本は、5人で一つの物語を共作したJOINT小説です。
 トップバッターの野ばらちゃんの物語で冴えない脇役だった女の子が角田さんの小説では妄信的な主役を務め、角田さんの小説を横切った少女が次の物語では主役で、、、、と、それぞれ別の物語が一部分を共有し合い重なり合いながら一つの物語を作り上げていく形式が面白かったし、代わりばんこに女の子がクローズアップされることにより、おのおの、JOYに熱狂した人生におけるある時代が浮き彫りになるところが良かった。JOYの名前は、たぶん読む人によって入れ替え自由なんだろうな。もう過ぎてしまったあの時代への感傷、そんなところもほろ苦く読んだ。
 どんな風に打ち合わせして共作したのか分らないけど、登場人物の設定&イメージをはっきり決めていなかったんじゃないかと思う。作家によって、登場人物に対して抱くイメージがバラバラなんだもん。野ばらちゃんが描いたまりんちゃんが最後の方になると!「えええええええ!そんなに凄味がある美人だったの?」驚きまくり。ま、それはそれでオツだったけど。
 5編のどれも、その作家ならではの持ち味が出ていてよかったが、上手いなあと唸ったのか角田光代か。JOYしか見えなくなった狂信的ファンの女の子を執拗に描く。JOYの一番そばにいたい。そのためには手段を選ばない必死さが病的で、痛くて痛くてひりひりするほど。その結果、手に入れたものは、、、ああ、切ない。
 またこんな豪華な共作集があったら、読んでみたいなー。