恩田陸ほか『本からはじまる物語』

本からはじまる物語

本からはじまる物語

 18人の作家によって描かれた「本」「本屋」が舞台のささやかだけど印象深い18の物語が収録。幻想的でファンタジックなもの、シリーズ探偵を投入したささやかな書店ミステリ、人情話、主人公と一緒に勇気づけられるもの、ほろ苦くも甘酸っぱい思い出、ごくごく普通の女の子の「今」を切り取って描いたもの、郷愁を誘われるもの、本屋から始まるラブストーリーなどなど、作家ならではの持ち味を生かした作品がぎゅぎゅぎゅっと詰まっている。いくつか趣向がカブってしまったものもあるけど、まあ、気にしない気にしない。あっという間に読めちゃうのが惜しいぐらい、本や本屋好きにはたまらないアンソロジーだ。
 印象に残ったのは、本屋に猫はよく似合う。看板猫にあれこれレクチャーして欲しくなった今江祥智「招き猫異譚」に、すごく本質を突いているように感じられる恩田陸「飛び出す、絵本」、よくよく考えると「???」引っかかる点が出てくるもののアイデアの秀逸さに唸り、そしてその情景をぜひ見てみたいと思った切なくも美しい三崎亜記「The Book Day」、梨木さんがこんなにもヘンでヘンな話を描くのか!と驚いた梨木香歩「本棚にならぶ」など。これ、恩田作品と三崎作品で、残る16編を挟んでいる趣向がとても効果的かも!その他、初めて読んで「時代ものだからと敬遠してたけど、結構いけるかも」と思った山本一力「閻魔堂の虹」、作中語られるおじいちゃんの昔話がしみじみと胸に沁みるいしいしんじ「サラマンダー」などもよかった。じーん。