平安寿子『恋愛嫌い』

恋愛嫌い

恋愛嫌い

 

 女子の痛快な本音炸裂の「アンチ恋愛」小説。「諦めるのは何より上手」「感情が足りないと言われる」「前向きという言葉が嫌い」「いざとなると尻込みする」等、恋が苦手な女性達を描いた、痛いほどリアルでじんわりと勇気をくれる連作短編集。

 通販業者の販売データ処理を請け負う会社勤務の翔子は26歳、スナック菓子メーカー販売促進部勤務のクールビューティー鈴枝は35歳、コンタクトレンズ売店勤務の喜世美は29歳。3人は見た目に年齢もばらばらながら、いつの間にか仲良くなったランチメイト。自分に正直なゆえに恋愛小説のヒロインのようになれない恋愛下手な彼女たち3人の揺れる思い、恋愛模様を描いた連作集。
 作品のあちこちに散りばめられている女子の本音の部分は痛快で面白いんだけど、彼女たち3人が「恋愛嫌い」というよりも、単に非恋愛体質で上手く立ち回れない不器用な自分を自己弁護してるだけのように受け止められなくもないのがなんとも(汗)。翔子や鈴枝にはイマイチ共感できない部分があったけど(「この人だ」と思えるような恋の相手と巡り合ってないだけじゃーんと思っちゃう)、「キャント・バイ・ミー・ラブ」で物で女心を釣ろうとする元同級生に対する翔子の冷静な視線には、思いっきり共感してしまった。
 世間の物差しで生きるよりも、自分らしく生きたい。でも、、、揺れる20代、30代独身女性の気持ちを描く。こういうアイロニーに満ちた作品を書かせると平さん、本当に上手い。連作集を締めくくる話での喜世美の選択が吉となりますよう、お祈りしてまーす。