I.B.シンガー『お話を運んだ馬』

お話を運んだ馬 (岩波少年文庫 (043))

お話を運んだ馬 (岩波少年文庫 (043))

 1年前、図書館本放出でいただいてきた本を読む。タイトルにも惹かれたけど、「確か児童書として有名な本で、いい本なんだよなあ」そんな理由で貰ってきたんだけど、このタイミングで読むことができて、本当によかった。しみじみ。
 何も知らない子供の時に出逢っていたかった。もろもろを知った大人になってから再読すると、より深く味わえる作品だと思う。お話の名手ナフタリに作者が重なる。そしてなぜ人間にとって物語が必要なのか、優しく真摯に語りかけてくれる>表題作。ナフタリの静かだけどまっすぐで熱い生きざまに、思わず胸が熱くなる。幼馴染のショシャが登場したりもするワルシャワでの幼少時代が投影されていると思しき自伝風小説もいいし、民話風の大らかな滑稽話もいいし(どれだけ豊かな文化だったんだろう!)。泣いて笑って心に沁みる。大切な作品になりそう。