和田誠『倫敦巴里』

倫敦巴里 (1977年)

倫敦巴里 (1977年)

 某ラジオ番組で、詩人の荒川洋治さんがこの作品に収録された「雪国」パロディを紹介されていたとかで、興味を持って読んだんですが、、、ページを開くと、冒頭からいきなり「殺しの手帖」。ぶはは(笑)。「雪国」だけが特別なのではなく、隅から隅まで全ページに渡って先行する作品や人物への愛で満ち満ちているパロディ集なんですね(笑)。
 「話の特集」に1966年から1977年にわたって掲載されたものを一冊にまとめたもの。今から、もう40年も前なんですねえ。でも、今読んでも十分に新鮮で面白いです。扱ってるネタからその時代の空気がぷんぷん漂ってくるのが、今読むととても微笑ましい。登場する皆さんがみな、当たり前だけど40歳分お若くて(笑)、思わず「おー」感嘆してしまいましたわ。さすがにその当時の流行・時事を扱ったものは、今読むと、元ネタを知らずに笑えないものもあるんですが(パロディに解説なんてヤボの極み)、イラストレーターとしての一面しか知らなかった和田誠の笑いのセンスに舌を巻きながら、最初から最後まで楽しく読書しました。
 やっぱり「雪国」パロディが群を抜いて面白かった。これ、川端康成の「雪国」冒頭部分を「もし作家××××が書いたらどうなるのか…」。雪国パロディであるのと同時に、文体を真似する作家のパロディでもある…つまり二重の意味でのパロディなんですよね。深い理解がないと“いかにもらしい”文体は真似できない訳で、そこに両方向への愛を感じちゃいます。読みながら爆笑爆笑。ひぃぃぃぃぃぃ。笑いすぎて、お腹の皮はよじれぱなし!特に大笑いしたのが植草甚一星新一淀川長治大藪春彦落合恵子、「ねじ式」式、筒井康隆、宇野鴻一郎、横溝正史、そしてオオトリの!!!!ぐわっはっはっはっ![奥付けの後にサプライズが!!!ゲラゲラゲラゲラ。]
 この本、読んで損なし!あんまり若すぎるとついていけずに楽しめない読者がいるとは思いますが。7割方、楽しく読んでしまった私って、、、(汗)。